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肝斑・ADM・PULの違いとは?治療前に必ず見分けるべき理由

BASE Dermatology 2026. 09. 04 READ 8 MIN
肝斑・ADM・PULの違いとは?治療前に必ず見分けるべき理由

顔にできた茶色いシミが、すべて肝斑(かんぱん)だとは限りません。肝斑、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス。英語ではABNOM:Acquired Bilateral Nevus of Ota-like Maculesとも呼ばれます)、そしてPUL(部分的片側性黒子症:Partial Unilateral Lentiginosis)は、色素がある深さも、できる原因もそれぞれ違います。そのため、同じレーザーの当て方で治療してしまうと、結果に差が出ることがあるのです。ADMやPULという名前にはなじみがないかもしれませんが、診察室では肝斑と同じくらいよく出会う色素疾患です。

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シミ治療、なぜ診断が先なのでしょうか?

診断が変われば、レーザーの波長もエネルギーも、照射の間隔まで、すべてが変わってくるからです。まず、色素がどの深さにあるかが違います。肝斑は、メラノサイト(色素をつくる細胞)の働きが過剰になり、そこに基底膜のダメージが重なって起こる慢性の病変で、色素は表皮だけでなく真皮にまで及びます。ADMは真皮にメラノサイトがある病変で、PULは左右両側ではなく片側だけに生じる、表皮基底層のメラニン色素の病変です。できる原因が違えば、治療への反応の仕方も違います。だからこそ、診断を誤ったままレーザーを当てると、かえって悪化してしまうおそれもあるのです。

「レーザートーニングを何度も受けたのに良くならなくて」と来院される方は少なくありません。そうした場合、私はまず肌画像診断機での撮影と診断からやり直すようにしています。顔の色素トラブルで来院される方のうち、実はかなりの割合が肝斑ではなかったり、肝斑と別の病変がひとつの顔に混在していたりします。ADMやPULを肝斑だと思い込み、弱いトーニングだけを繰り返してこられた方もいらっしゃいます。

肝斑・ADM・PULは、それぞれどんな病変ですか?

肝斑は、境界のぼんやりした茶色いシミが、両頬に左右対称に広がる病変です。20〜40代の女性に多く、紫外線やホルモンバランスの変化など、複数の要因が重なって生じます。慢性的に再発しやすい疾患のため、数回の施術で終わるものではありません。

ADMは、メラノサイトが表皮ではなく真皮にある病変です。そのため色は茶色ではなく青褐色や灰褐色に見え、頬骨のあたりの左右に、丸い点状のシミがいくつも集まって現れます。主にアジア人女性の20〜30代以降に発症し、大人になってから生じる後天性の病変という点で、生まれつきの太田母斑とは区別されます。

PULは、顔の正中線を越えず、片側だけにそばかす状の茶色い斑点がまとまって現れる色素疾患です。多くは子どものころに始まり、点状集簇性母斑(nevus spilus)など、ほかの疾患と間違われやすい病変でもあります。

肝斑・ABNOM・PULを3列で比較し、それぞれの顔面での分布パターンと皮膚断面における色素の深さ(表皮・真皮)を示す医療インフォグラフィック

鏡でチェックできる見分けポイントは何ですか?

鏡の前で確認していただきたいポイントは4つあります。境界が周りににじんでいるか、それとも線が引けるほどくっきりしているか。色は茶色か、青みがかったグレーか。左右対称か、片側だけに集まっているか。そして、いつごろからあるか。境界のぼやけた茶色いシミが左右対称にあれば肝斑に、青灰色の点状のシミが頬骨の左右に集まっていればADMに近いと考えられます。斑点が正中線を越えず片側だけにまとまっているなら、PULの可能性があります。

とはいえ、セルフチェックはあくまで目安にとどめてください。肝斑とADMがひとつの顔に混在している方も多く、実際の病変は写真ほど典型的ではないものです。ウッドランプ(Wood’s lamp)やダーモスコピー(dermoscopy)といった検査で、皮膚科専門医が色素の深さを直接確かめてはじめて、治療計画を立てることができます。

診断によって治療はどう変わりますか?

判断の軸になるのは、色素の深さ、周りの皮膚のダメージの有無、再発のしやすさ、肌の反応性の4つです。

肝斑は、今のところ「完治」という概念のない慢性疾患です。レーザー治療は低出力のレーザートーニングが中心となり、ピコトーニングや高周波(RF)機器を使って真皮の環境を整えていく治療も効果的です。また、レーザーだけに頼るのではなく、紫外線対策と外用薬、必要に応じて内服薬を組み合わせるのが原則です。ADMには、真皮まで届く波長のレーザーで、比較的しっかりとした強さの治療を行います。照射の間隔を十分にあけ、その間に生じる色素沈着もきちんとケアしていくことが欠かせません。PULは、色が濃く境界のはっきりした病変には高出力レーザーを用い、病変の中でも比較的深くに残る色素には低出力トーニングを複数回重ねる、というように分けてアプローチします。肝斑ほど長期にはならないものの、PULにも継続的なケアが必要です。それぞれの治療の詳しい内容は、あらためて別の記事でご紹介します。

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どの病変であっても、私は正確な診断のうえで1対1のオーダーメイドカウンセリングを行い、治療方法と回数をご案内しています。カウンセリングでは、病変の正確な診断、併存する疾患の有無、予想される治療期間をご確認いただけます。同じ診断名でも肌の状態によって計画は変わり、結果には個人差があります。

治療後に期待できる範囲と注意点は?

治療を受けてすぐに色が薄くなるわけではなく、1〜2か月かけて少しずつ薄くなっていきます。回数を重ねるごとに、変化は実感しやすくなっていくものです。肝斑は治療後も、紫外線やホルモンバランスの変化で再び濃くなることがあるため、紫外線対策を含めたメンテナンスまでが治療の一部だとお考えください。ADMとPULの場合も、施術後は紫外線対策を心がけていただく必要があります。

副作用についても、前もって知っておくことが大切です。レーザー治療のあと、しばらく色が濃く見える炎症後色素沈着(PIH)が生じることがあり、真皮の色素へのレーザー治療後に一定の割合で色素沈着が起こることは、研究でも報告されています。当院では、これをできるだけ減らすために治療間隔を調整し、鎮静ケアと紫外線対策を含むアフターケアもあわせてご案内しています。色素沈着が生じた場合も、時間の経過とともに薄くなっていきます。また、一時的な刺激で肌が赤くなることもありますが、こちらもほどなく落ち着きます。

トーニングを数か月受けても変わらないなら、肝斑ではないかもしれません

よくあるご質問

肝斑とADMがひとつの顔に同時にあることはありますか?

はい、この2つの病変が頬骨のあたりで重なっている方には、診察室でよくお会いします。その場合は、弱い治療と強い治療のバランスと順序を、しっかり計画しておくことが大切です。併存しているかどうかは肉眼だけでは判断が難しいため、肌画像診断機での診断が必要になります。

トーニングを10回以上受けても効果がない場合、どうすればいいですか?

施術をさらに重ねる前に、まず診断を見直してみることをおすすめします。ADMのように真皮に色素がある病変なら、表皮向けの低出力トーニングでは反応に限界があるからです。ウッドランプやダーモスコピーで色素の深さを確かめたうえで、治療計画を立て直すのがよいでしょう。

PUL(部分的片側性黒子症)はそばかすとどう違いますか?

見た目はそばかすとよく似ていますが、分布が違います。そばかすが顔の両側に散らばるのに対し、PULは顔の正中線を越えず、片側だけにまとまって現れます。発症時期もほとんどが子どものころなので、分布と時期をあわせて見ると、区別の手がかりになります。

ADMの治療後、色素がかえって濃く見えることはありますか?

はい、レーザーの刺激に反応して、一時的な赤みのあとに炎症後色素沈着が生じることがあります。治療間隔の調整と紫外線対策でリスクは減らせますが、程度には肌の状態による差があります。ほとんどは時間とともに回復していきますが、色が長く残るようであれば、クリニックで経過を確認する必要があります。

ピコトーニングだけで肝斑は消えますか?

肝斑は今のところ完治できる治療法のない慢性疾患ですから、ピコトーニングだけで消しきるのは難しいのが実情です。紫外線対策と外用薬、必要に応じて内服薬を併用しながら、レーザー治療を進めていきます。長期的なゴールは「消すこと」というより、薄い状態を保ち続けるメンテナンスに近いものだとお考えください。

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本記事の情報は医学的診断に代わるものではありません。正確な診断と治療計画については、専門医にご相談ください。

参考資料

執筆・医学的監修: 金炳守(キム・ビョンス)院長 — Byeongsu Kim · 皮膚科専門医

本コンテンツは医学的情報の提供を目的とし、診断・治療に代わるものではありません。効果や反応には個人差があります。

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